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B787型機、定期便の運航を再開 4カ月半ぶり

 全日空と日本航空は1日未明、ボーイング787型機の定期便の運航を4カ月半ぶりに再開した。バッテリートラブルで運航停止が続いていたが、全機の改修が終了。両社とも初便はほぼ満席となり、午前1時過ぎに東京・羽田空港を離陸した。

 全日空の復帰第1便はフランクフルト行きで、146人が搭乗。搭乗口では、篠辺修社長が「十分な安全対策と入念な準備をして定期線に投入した。安全を第一にこれからも努力する」とあいさつし、出張のためそのまま機内へ向かった。

 日航はシンガポール行きに乗客184人が乗った。搭乗口から見送った植木義晴社長は「4カ月半の運航停止は長かった。実績を作り、お客様に(安心を)感じてもらうしかない」。

 全日空機で出張する東京都の会社員女性(24)は「日程上この便に乗るしかなかった。再開して最初の便なので不安はある」。日航機で娘を訪ねる横浜市の無職男性(67)は「787型機だとは知らなかった。十分に点検されていると信じるしかない」と話した。

 全日空は5月26日、臨時便として国内線で787型機の営業運航を再開した。

    ◇

 全日空によると、787型機で1日午前6時35分に羽田を出発した鹿児島行き619便(乗客・乗員計235人)は、上空で右前方ドアから空気が漏れるような異音がした。鹿児島に定刻通り着陸後、点検したが、異常はなかった。
この影響で折り返しの大阪行きが約1時間10分遅れた。

出典:朝日新聞電子版


 ついに原因はうやむやのままB787の就航が再開された.
日本航空のホームページに,今回の事故の顛末が掲載されている.


ホームページの記述には,あたかも原因が解明されたかの様に書いてある.

今回、当社ならびに国内他社で発生したバッテリー不具合は、青く塗られたバッテリーケース内に収められている「セル」と呼ばれる8個のリチウムイオン・バッテリーのなかの1個が何らかの理由で過熱したことから始まったことが解明されました。

バッテリーセルが過熱したと言うのは,不具合原因ではなく「不具合現象」だ.

なぜ過熱したのかと言うのが原因となる.
これを突き止めて初めて原因が解明されたと言う.

社外向けの発表では原因が解明されておらず,対策は以下の様に書かれている.

プロジェクトチームは、洗い出した約100項目の原因を、1つ1つ詳細に分析、評価したところ、約20項目については、「理論上は起こりうるが、現実的には起きえないもの」、もしくは「既に対策が講じられているもの」であることを確認しました。  そこでプロジェクトチームは、残る約80項目の原因に対策を講じました。 つまりこれは、想定しうるあらゆる原因を網羅した対策になっています。 後日、運輸安全委員会によって当社事例、もしくは国内他社事例の原因が特定された場合でも、既に対策は講じられていることになります。同時に、バッテリーからの発煙、熱損傷など、いかなる不具合にも対応した対策となっています。

約100項目洗い出したのは「原因」ではなく「要因」だ.

「絞り込んだ約80項目の中に今回の事故の原因があり,その他はバッテリーセルが過熱すると言う不具合モードの潜在要因だ」この仮説が成り立つのは,全ての要因を洗い出すことができた,と言う条件が必要となる.

今回、ボーイング社が講じた全18項目の対策は、多階層の防護構造となっています。すなわち、1層目の対策として「1個のセルの発熱防止対策」を講じたにも関わらず、万一1個のセルが過熱状態になったとしても、その過熱状態を周囲のセルへの伝播させない「セル間の伝播に対する対策」(2層目)が過熱の拡大を止める構造となっています。

この2層目の対策により、バッテリーシステムの信頼性は、さらに改善されます。

一つのセルの過熱状態が周囲のセルに影響を与えない様にする,と言う対策はバッテリーシステムの信頼性をあげる対策とは言わない.
つまり一つのセルが故障発熱した時点で,バッテリー全体の機能は失われている.バッテリーシステムの信頼性をあげているのは,バッテリーの冗長化だ.

バッテリーシステムの信頼性に関しては,全4セットのバッテリと発電機で冗長化出来ており,4セット全て壊れても風力発電機で電力をまかなう様に信頼性設計が出来ている.

今回発生した問題は,バッテリーシステムの信頼性の問題ではなく,火災につながる可能性のある重不適合だ.
 

今回の対策策定にあたってボーイング社は、想定されるあらゆる原因を洗い出しました。ボーイング社は、さらに「想定外を想定」し、万一の場合でも発生した煙が操縦室や客室内へ流入したり、バッテリーが設置されている電気室で火炎が発生するのを防止するため、3層目の対策を追加しました。

第二層の対策と第三層の対策を合わせて,バッテリーセルの過熱が発煙発火につながらない様にする対策だ.
つまりバッテリーが故障して発熱しても,火災の可能性がある重不適合になるのを防ぐ対策だ.

バッテリーシステム全体としては,

  • バッテリー単体が故障しない様にする対策
  • 万が一バッテリー単体が故障しても,バッテリーシステム全体では機能を失わない様にする冗長化対策
  • その上で,バッテリー単体の故障が火災などの重不適合に発展しない様にする安全対策
と言う三段階の対策が必要だ.
ホームページに記述されている2層対策,3層対策と若干違っているのが,ご理解いただけるだろうか.記述にある2層対策はバッテリー内部の類焼防止対策,3層対策はバッテリー外部への類焼防止対策だ.
残念ながら,今回の対策には上述の一番目バッテリーの故障対策が含まれていない.

具体的にはバッテリー全体をステンレス製の強固な容器に格納し、電気室のほかの機器からバッテリーを完全に隔離しました。万一、バッテリー内の1個のセルが過熱状態となり、さらに周囲のセルまでが過熱状態となって煙が発生した場合でも、その煙は容器内に閉じ込められ、新設した専用配管を通じて、直接機外に放出されるため、操縦室や客室内に煙が漏れ出すことはなくなりました。また、このステンレス製の容器は密閉されていますので、仮に火炎が発生しても容器内は酸素が不足し、自然に鎮火することになります。

上記は,外部類焼を防ぐ(ホームページ上の記述では3層対策)だが,矛盾している様に思える.
密閉容器内で発火しても酸素の供給が無ければ,自然鎮火する,と言う理屈だ.
しかし,容器内に閉じ込められた煙を専用配管で機外に排出する,と言う事は密閉容器と外気の流通があるはずなので,外部の酸素が遮断出来ている状態とは考え難い.


ところでここであげた問題は,実は些細な事でしかない.
本当に重大な問題点は,バッテリーの発煙事故だけで,未対策の潜在故障要因が80件もあったと言う事だ.

乗用車の設計には,FMEA(故障モード影響分析)を義務づけられているのに,航空機の設計には,FMEAは義務づけられていないのだろうか?

乗用車の事故による人員の死傷リスクは10人程度であるが,航空機事故の場合,そのリスクは10倍となる.しかもほとんどの場合が死亡事故となる.
航空機の設計は,事前に潜在リスクの洗い出しと,対策を実施すべきだ.B787の最大の問題は,バッテリー発煙で80項目もの,潜在不良原因が未対策だと言う事だ.今回はバッテリーに関しては,潜在不良原因に対する対策が出来た.
その他の部位についても,再度見直しをする必要があるのではないか?


余談だが,JALの解説ページを見て,全発電・バッテリーシステムが故障した場合に,風力発電機が登場することを知った.
優れた冗長化設計だと感心した(笑)




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