品質保証

スマイルカーブ

 このブログの読者様なら皆さん「スマイルカーブ」をご存知だと思う。
1970年代に、反戦の象徴として日本で流行った黄色いスマイルバッチを覚えておられるだろうか?あのニッコリ笑った口元の半円弧カーブをスマイルカーブと呼んでいる。そんな昔の事は知らないぞ、と言う方は、Facebookのスマイルマークを思い出していただきたい。

スマイルカーブの縦方向に価値の高低を示す軸を当てはめる。左右方向には、モノ造りの工程を示す軸を当てはめる。
左端を原料生産をする川上産業、右端を直接消費者と向き合っている川下産業、その中間を川中産業とする。

そうすると川上産業と川下産業の付加価値が高く、川中産業の付加価値が低い、と言うコトを示すカーブとなる。いわゆる下請け企業と呼ばれる川中産業の付加価値が低いと言うのは、納得がゆかないかも知れない。しかし顧客である川下産業からは、無理な納期やコストダウンを迫られてもイヤとは言えない。
仕入先である原材料メーカからは売ってやると言われ、値上げを呑まなければ出荷を停めると脅かされる。

こういう状況から考えると、スマイルカーブ理論はあながち外れている訳ではなさそうだ。

横軸の取り方には、もう一つの説が有る。左端が開発設計、中央が製造、右端がサービスと言う商品実現プロセスの工程順に並べる方法だ。
この場合は、設計、サービスの付加価値が高く、製造の付加価値が低いと言う事になる。

どちらにせよ、川中産業の製造が一番付加価値が低いと言う理論だ。
お客様の大部分が川中産業であり、製造現場の改善をお手伝いしている私としては、余り心地よい理論ではない(苦笑)

なぜこんな話をしたかと言うと、週末に「カンブリア宮殿」で旭硝子を紹介した番組のアーカイブを見たからだ。

以前、バスを生産する中国工場の指導をした事が有る。倉庫に保管してあるバスのフロントグラスが粉々に砕けているのを見た。夏の暑い日に、気温が上昇し強化ガラスが割れると言う。
中国では、建材用の強化ガラスが突然粉々に割れてしまう事故が時々
り、新聞記事になっている。
多分材料の中に不純物が有り、それが原因となり周囲温度が上昇した時に、熱膨張係数の差により応力が一点集中で発生し、粉々に割れるのだろう。

当然世界トップクラスの旭硝子の製品では、こういう事は発生しないだろう。
こういう品質を「当たり前品質」という。良くて当たり前なので、顧客満足は大して高くならないが、品質が悪ければ一気に不満となる。

番組で紹介されていた旭硝子の商品には、厚さ0.05mmのガラスシート、金槌で叩いても割れないガラス、紫外線を遮蔽するガラス、熱を遮蔽するガラス、蒸気を当てても曇らないガラス、反射しないガラスなどが有った。
どれもこれも、消費者としてこんなガラスが有れば嬉しいと感じる商品だ。

旭硝子は、スマイルカーブ理論で言えば左端の川上産業に属する。
旭硝子が提供する原材料は、切断したり、研削したり、研磨する川中産業を経由し、川下産業で製品に組み込まれ消費者に届く。

旭硝子にとって、川中産業は顧客であり、川下産業は顧客の顧客である。
消費者はそのまた先の顧客となる。

付加価値の高い商品を顧客に提供しようと考えたら、顧客の要望を聞いているだけでは駄目だ。顧客の顧客、更にその先の顧客の要望に耳を傾けなければならない。これをCS(顧客満足)チェーンと呼んでいる。

旭硝子の商品開発は、消費者の潜在ニーズを満たす事を目標とし、顧客の顧客に商品提案をすることになる。その結果直接の顧客である、川中企業が売ってくれと言って来る。いわば、顧客の顧客を通り越して、消費者の心をつかんでしまえば、黙っていても顧客は注文をくれる様になる。

部品を生産し、顧客に納品している川中企業でも同じ事が出来るだろう。
顧客からいただいた図面通りに生産するのではなく、消費者の都合を考え部品開発をする。直接の顧客(購買部門)の要求だけではなく、製造部門、設計部門の要望を聞いて、提供する商品・サービスを改善する、こういう事を考えるとCSチェーンが出来上がり、なくてはならない仕入先となるはずだ。

これは「当たり前品質」を越えた「魅力的品質」になるに違いない。


このコラムは、無料メールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】に掲載したコラムを加筆修正したものです。

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一点集中力

 「みやざき中央新聞」と言う新聞をご存知でしょうか?
普通の宮崎県地方紙という訳ではない。「美しい郷土を子どもたちに」と言う理念がタイトルに添え書きされている。毎週月曜日発行の新聞だ。
新聞と言ってもニュースなどは載っていない。社説やコラムが2ページの紙面に掲載されている。

みやざき中央新聞

かなり変わった新聞だが、日本全国の読者に支えられている。
その新聞社の社長・松田くるみ氏の書籍↓からこんな話を紹介したい。

「なぜ、宮崎の小さな新聞が世界中で読まれているのか」松田くるみ

書籍の中に田中真澄氏の講話が紹介されていた。

「凡人は、一点集中しかありません。コツコツ、コツコツといくしかないのです」

「足の裏をかなづちで叩いても痛くありません。ところが、針でつつかれると飛び上がるくらい痛いでしょ。一点に集中しているからです。仕事も同じです。凡人は一点集中で勝負するしかないのです!」

なるほどと感心した。
「一点集中」を針に例える。これは分かり易い。
経営資源がわずかしかなくても、一点に集中すれば大きな力となる。
逆に経営資源が豊富でも、一点集中しなければ力は分散される。

特に中小企業は、アレもコレもと力を分散させてしまえば、少ない経営資源を有効に活用する事は出来ない。

そして、一点集中した上で、コツコツと継続する。
継続は、後から来た人には克服出来ない力となる。例えば、このメルマガは今年の10月1日で丸7年となる。7年間継続していると言う事実は、後から来た人には絶対克服出来ない。

みやざき中央新聞も松田くるみさんが、コツコツと飛び込み営業を続け、読者を増やして来た。6月16日には2558号が発行される。
私のメルマガと同じ様に毎週月曜日に発行しておられるが、私のメルマガは366号なので、7倍近い差がある。この差は絶対に埋められない。


このコラムは、無料メールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】に掲載したコラムです。

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チームとグループ

 社内でプロジェクト活動をする時は、活動メンバーはプロジェクトチームと言う。プロジェクトグループとは言わない。
会社のメンバーと一緒に旅行に行くときは、グループ旅行と言う。チーム旅行とは言わない。

このチームとグループの境目は何だろうか?

Wikipediaの定義によると、
“グループの目的はメンバー個々の業績水準を底上げする事であり、その成果は個人の成果の総和にしかならない。
一方チームには、他人の意見に耳を傾け建設的に反応し、時には他人の主張の疑わしき点も善意に解釈し、彼らの関心ごとや成功を認める、と言った価値観が集約されたチームワークが存在し、その成果は集合的作業成果による共同の貢献が含まれるのでグループのそれより大きくなる。”
とある。

例えば、作業員数人で単純作業をする事を考えてみよう。

一人ひとりで作業をする場合、疲れたり飽きたりした場合作業効率が低下する。
一人で作業しているため、さぼる事も可能だ。
グループで作業をすると相互監視が抑止力となり、さぼる作業者はいなくなる。
チームで作業をすると、作業達成の価値観を共有し、疲れた者や飽きた者を励まし合いながら作業をする。

と言うことになるだろうか。

グループのメンバーは自分の責任を果たせばメンバーとして認めてもらえる。
チームのメンバーはチームへの貢献が有ればメンバーとして認めてもらえる。
どうもこの辺がグループとチームの境目ではないだろうか。

こう考えると集団旅行もグループ旅行ばかりではないと思い至る。
冒険を伴う旅行、目的を持った旅行などはチーム旅行と言っても良かろう。
例えばワンピースの麦わら海賊団は間違いなくチームであり、ワンピースを求める彼らの船旅は、グループ旅行ではなくチーム旅行だ。

違う側面からグループとチームの境目を考察すると、
グループのメンバーは、場所と時間を共有する。
チームのメンバーは、目的と成果を共有する。

グループのメンバーは、一緒に居る事がまず第一義となる。一緒に居る事によりテンションが高くなる。その結果成果につながる事も有るだろう。
一方チームのメンバーは、目的と成果を共有しているので、成果につながる事が優先される。テンションよりはモチベーションの高い集団となる。

居酒屋で盛り上がっているのはテンションの高いグループ。
残業時間も黙々と頑張っているのがモチベーションの高いチーム。
チームの成果にコミットしているチームメンバーは、自分の仕事が終わっても仲間の仕事を助ける。

以上を整理すると、
◆グループとは;
メンバーがそれぞれ自分の責任にコミットしており、場所と時間を共有した、テンションの高い集団。
◆チームとは;
メンバーがそれぞれチームへの貢献をコミットしており、目的と成果を共有した、モチベーションの高い集団。
となるだろう。

グループの方が居心地が良い場面も多いだろう。
しかし本当に私たちに必要な組織はチームだと思うがいかがだろうか?

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罰金制度

 中国で工場経営をしておられる方々と会話する時に,しばしば「罰金制度」に関する話題が出る.日本ではあまり聞かないが,中国の工場では,つばを吐いたら50元,遅刻は10元など事細かく罰金が決めてあることがある.

「躾」の要素もあるのだろうが,業務に関しても罰金を決めてある.
不良が発生したら,その不良の責任部署に対して罰金をする.部門長と,部門全員に罰金が科せられる.

好ましくない行動に対して罰金をすることにより,好ましくない行動を減らす.
好ましい行動に対して褒賞を与えることにより,好ましい行動を増やす.

いわゆる「飴と鞭」の政策だ.
ほとんどの工場の罰金制度は,「飴なし鞭」政策になっている.
飴はあっても,年に一度模範従業員として表彰されるだけ.金一封も付くが,全従業員の中のほんの一握りだけ,忘れた頃に貰っても効果は薄い.

これでは「飴と鞭」とは言い難く,罰金による恐怖統治だ.

不良発生に対する罰金は,私に言わせれば,全く効果はない.
以前経験した事例では,作業員がミスをして不良を発生させたので,罰金を科料したいと班長さんが申請書類をあげていた.
わざとミスをする作業員がいるのであれば,罰金など科すよりもクビにすべきだ.
しかしそんな作業員はいない.ミスが出ない様に,作業方法を工夫したり,作業員を指導するのが,班長の仕事だ.罰金科料申請書を書く暇があったら,改善しろと言いたくなる.

最悪なのは,不良が発生した時に誰の責任なのかを追及するだけとなり,再発防止の議論が起きない事だ.
罰金を払わなければいけないので,当然自分の非は認めない.問題の原因を明らかにする事は非常に困難となる.

其の様な状況で,部門間の協力体制が出来るとは思えない.
不適合是正には,部門間の協調が必要となる.

例えば作業者が単純ミスをして客先に不良品を出荷してしまった.
この様な状況では,製造部門と検査部門に罰金が科せられる.
ミスをした作業員に罰金を科した所で,別の作業員がミスをする可能性は無くならない.検査員を注意しても不良を見逃す可能性は無くならない.

本当に不良を無くしたいのならば,ミスが発生しない様に設計を変更する,又は作業員によってバラツキが出ない様に治具化する,など製造部門以外の助けがなければ効果は期待出来ない.

罰金制度によって,この様な協調性が損なわれる.

鞭を使っても,不良は減らない.
飴を与えても,モチベーションは上がらない.

ダニエル・ピンクの「モチベーション3.0」を持ち出すまでもなく,罰金制度は百害あって一利無しだと思っている.

参考文献:
「モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか」
著者:ダニエル・ピンク

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続・本末転倒

 経営にとって「顧客」「従業員」のどちらが「本末」の「本」であるか?
考えていただけただろうか?

「顧客」と「従業員」の二者択一で考えるのは,ムリがあると言うご意見もあろう.「市場ニーズ」「技術シーズ」「資本」など他にも因子はいくらでもあるだろう.
多少無理があっても「社外(顧客)」「社内(従業員)」を大きくまとめてしまえば,単純化して考えることができる.

このメルマガを長く読んでいる読者様ならば,私が「従業員」が「本」だと考えている事は予測出来たに違いない(笑)

サービス業・接客業を考えれば,簡単だ.
従業員が満足をしているから,お客様が満足出来るサービスを提供出来る.
お客様が満足するから,売り上げが上がり,経営業績が上がる.
こう言う「本末」は容易に想像がつくだろう.

腹が減っているウェイトレスが,顧客に感動的な食事体験を提供出来るとは思えない.
自社製品に自信を持っていない販売員が,顧客にモノを売れるとは思えない.

製造業でも同じ事は言えるはずだ.

私の友人は,赤字と黒字を行ったり来たりしている工場の経営を引き継いだ.
彼は引き継いだその年から,増収増益を継続している.

彼がやったのは「本」を養う事だ.
従業員に毎日清掃をさせる.月に一回は工場周辺の清掃ボランティアをする.
こう言う活動を通して,従業員に感謝と奉仕の精神を身につけさせた.
その結果,顧客クレームはゼロになり,業績が上がっている.
近隣の工場が,抗日デモで荒れている時も,一切ストライキは発生しなかった.

7月の東莞和僑会で,この工場を見学に行くことになった.
私は,彼が経営トップに就く前にも一度工場訪問をしている.
以前の工場の様子も知っているので,大変楽しみにしている.
ご興味がある方は,7月13日(土)の予定を空けておいていただきたい.
必ず学びのある工場見学会となるはずだ.





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物有本末

 儒教の経典・四書五経の『大学』に次の様な一節がある.
『物有本末,事有終始,知所先后,則近道矣』

日本語では以下の様に素読される.
「物に本末あり.事に終始あり.先後する所を知れば,すなわち道に近し」

物事には本末・終始あり,この後先を誤たざれば,人としての道を誤たず.
という意味だ.

「本末転倒」と言う言葉があるが,この様な状態となれば,上手く行くモノも上手く行かなくなる.

全ての人には親があり,祖先がある.
親や祖先が「本」であり,私たちは「末」だ.
先祖を敬い,親に感謝をしなければ,人の道から外れ幸せにはなりませんよ,と言う教訓だ.

なぁんだ,当たり前じゃないか.多くの方がそう思われただろう.
私たちは小さい時から,道徳として儒教精神を繰り返し教え込まれて来た.
皆が知っている事だ.しかし人の道に外れてしまった人も多い.人の道から外れてはいなくても,不幸な人たちも多い.

論語を初めとする儒教の教えは,皆当たり前の事ばかりだ.それを知っている事が重要なのではない.重要なのは,当たり前を実践する事だ.

『物有本末』を政治に置き換えて考えてみるとどうなるか.

国の繁栄は,民の幸せが「本」だ.国民が皆幸せになるから,国が繁栄する.
国の経済を維持するために増税をする,と言うのは本末転倒だ.
国民が幸せになる様にすれば,税収が上がる.

逆に減税をする.そうすれば国民は喜んで消費をする.その結果税収が上がる.
経済と言うのは,究極の所大衆のココロが動かしている,と言っても過言ではないだろう.
特に日本の様に,経済の大半が国内消費となっている国では,国民の感情が景気を決めている.
失われた20年,デフレスパイラルなどと言うマスコミの報道が,大衆の感情を操作し,景気の動向を決めている.実際日本の富裕層(1億円以上の現金資産を持つ人)は,中国と比較して2倍程いると言うデータを見て驚いたことがある.


では『物有本末』を経営に置き換えるとどうなるか?

「本」は顧客か?従業員か?

あなたならば,どちらが「本」だと思うだろうか?
ちょっと考えてみていただきたい.



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B787型機、定期便の運航を再開 4カ月半ぶり

 全日空と日本航空は1日未明、ボーイング787型機の定期便の運航を4カ月半ぶりに再開した。バッテリートラブルで運航停止が続いていたが、全機の改修が終了。両社とも初便はほぼ満席となり、午前1時過ぎに東京・羽田空港を離陸した。

 全日空の復帰第1便はフランクフルト行きで、146人が搭乗。搭乗口では、篠辺修社長が「十分な安全対策と入念な準備をして定期線に投入した。安全を第一にこれからも努力する」とあいさつし、出張のためそのまま機内へ向かった。

 日航はシンガポール行きに乗客184人が乗った。搭乗口から見送った植木義晴社長は「4カ月半の運航停止は長かった。実績を作り、お客様に(安心を)感じてもらうしかない」。

 全日空機で出張する東京都の会社員女性(24)は「日程上この便に乗るしかなかった。再開して最初の便なので不安はある」。日航機で娘を訪ねる横浜市の無職男性(67)は「787型機だとは知らなかった。十分に点検されていると信じるしかない」と話した。

 全日空は5月26日、臨時便として国内線で787型機の営業運航を再開した。

    ◇

 全日空によると、787型機で1日午前6時35分に羽田を出発した鹿児島行き619便(乗客・乗員計235人)は、上空で右前方ドアから空気が漏れるような異音がした。鹿児島に定刻通り着陸後、点検したが、異常はなかった。
この影響で折り返しの大阪行きが約1時間10分遅れた。

出典:朝日新聞電子版

 ついに原因はうやむやのままB787の就航が再開された. 日本航空のホームページに,今回の事故の顛末が掲載されている.


ホームページの記述には,あたかも原因が解明されたかの様に書いてある.

今回、当社ならびに国内他社で発生したバッテリー不具合は、青く塗られたバッテリーケース内に収められている「セル」と呼ばれる8個のリチウムイオン・バッテリーのなかの1個が何らかの理由で過熱したことから始まったことが解明されました。

バッテリーセルが過熱したと言うのは,不具合原因ではなく「不具合現象」だ.

なぜ過熱したのかと言うのが原因となる.
これを突き止めて初めて原因が解明されたと言う.

社外向けの発表では原因が解明されておらず,対策は以下の様に書かれている.

プロジェクトチームは、洗い出した約100項目の原因を、1つ1つ詳細に分析、評価したところ、約20項目については、「理論上は起こりうるが、現実的には起きえないもの」、もしくは「既に対策が講じられているもの」であることを確認しました。  そこでプロジェクトチームは、残る約80項目の原因に対策を講じました。 つまりこれは、想定しうるあらゆる原因を網羅した対策になっています。 後日、運輸安全委員会によって当社事例、もしくは国内他社事例の原因が特定された場合でも、既に対策は講じられていることになります。同時に、バッテリーからの発煙、熱損傷など、いかなる不具合にも対応した対策となっています。

約100項目洗い出したのは「原因」ではなく「要因」だ.

「絞り込んだ約80項目の中に今回の事故の原因があり,その他はバッテリーセルが過熱すると言う不具合モードの潜在要因だ」この仮説が成り立つのは,全ての要因を洗い出すことができた,と言う条件が必要となる.

今回、ボーイング社が講じた全18項目の対策は、多階層の防護構造となっています。すなわち、1層目の対策として「1個のセルの発熱防止対策」を講じたにも関わらず、万一1個のセルが過熱状態になったとしても、その過熱状態を周囲のセルへの伝播させない「セル間の伝播に対する対策」(2層目)が過熱の拡大を止める構造となっています。

この2層目の対策により、バッテリーシステムの信頼性は、さらに改善されます。

一つのセルの過熱状態が周囲のセルに影響を与えない様にする,と言う対策はバッテリーシステムの信頼性をあげる対策とは言わない.
つまり一つのセルが故障発熱した時点で,バッテリー全体の機能は失われている.バッテリーシステムの信頼性をあげているのは,バッテリーの冗長化だ.

バッテリーシステムの信頼性に関しては,全4セットのバッテリと発電機で冗長化出来ており,4セット全て壊れても風力発電機で電力をまかなう様に信頼性設計が出来ている.

今回発生した問題は,バッテリーシステムの信頼性の問題ではなく,火災につながる可能性のある重不適合だ.
 

今回の対策策定にあたってボーイング社は、想定されるあらゆる原因を洗い出しました。ボーイング社は、さらに「想定外を想定」し、万一の場合でも発生した煙が操縦室や客室内へ流入したり、バッテリーが設置されている電気室で火炎が発生するのを防止するため、3層目の対策を追加しました。

第二層の対策と第三層の対策を合わせて,バッテリーセルの過熱が発煙発火につながらない様にする対策だ.
つまりバッテリーが故障して発熱しても,火災の可能性がある重不適合になるのを防ぐ対策だ.

バッテリーシステム全体としては,

  • バッテリー単体が故障しない様にする対策
  • 万が一バッテリー単体が故障しても,バッテリーシステム全体では機能を失わない様にする冗長化対策
  • その上で,バッテリー単体の故障が火災などの重不適合に発展しない様にする安全対策
と言う三段階の対策が必要だ.
ホームページに記述されている2層対策,3層対策と若干違っているのが,ご理解いただけるだろうか.記述にある2層対策はバッテリー内部の類焼防止対策,3層対策はバッテリー外部への類焼防止対策だ.
残念ながら,今回の対策には上述の一番目バッテリーの故障対策が含まれていない.

具体的にはバッテリー全体をステンレス製の強固な容器に格納し、電気室のほかの機器からバッテリーを完全に隔離しました。万一、バッテリー内の1個のセルが過熱状態となり、さらに周囲のセルまでが過熱状態となって煙が発生した場合でも、その煙は容器内に閉じ込められ、新設した専用配管を通じて、直接機外に放出されるため、操縦室や客室内に煙が漏れ出すことはなくなりました。また、このステンレス製の容器は密閉されていますので、仮に火炎が発生しても容器内は酸素が不足し、自然に鎮火することになります。

上記は,外部類焼を防ぐ(ホームページ上の記述では3層対策)だが,矛盾している様に思える.
密閉容器内で発火しても酸素の供給が無ければ,自然鎮火する,と言う理屈だ.
しかし,容器内に閉じ込められた煙を専用配管で機外に排出する,と言う事は密閉容器と外気の流通があるはずなので,外部の酸素が遮断出来ている状態とは考え難い.


ところでここであげた問題は,実は些細な事でしかない.
本当に重大な問題点は,バッテリーの発煙事故だけで,未対策の潜在故障要因が80件もあったと言う事だ.

乗用車の設計には,FMEA(故障モード影響分析)を義務づけられているのに,航空機の設計には,FMEAは義務づけられていないのだろうか?

乗用車の事故による人員の死傷リスクは10人程度であるが,航空機事故の場合,そのリスクは10倍となる.しかもほとんどの場合が死亡事故となる.
航空機の設計は,事前に潜在リスクの洗い出しと,対策を実施すべきだ.B787の最大の問題は,バッテリー発煙で80項目もの,潜在不良原因が未対策だと言う事だ.今回はバッテリーに関しては,潜在不良原因に対する対策が出来た.
その他の部位についても,再度見直しをする必要があるのではないか?


余談だが,JALの解説ページを見て,全発電・バッテリーシステムが故障した場合に,風力発電機が登場することを知った.
優れた冗長化設計だと感心した(笑)




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岡田武史元日本代表監督の中国プロサッカー改革

 6月4日に埼玉スタジアムで開催されたワールドカップ最終予選でオーストラリアと引き分け、日本は見事5大会連続の出場を決めたが、そのうちのフランス大会、南アフリカ大会で指揮をとった岡田武史前日本代表監督は、現在は中国に渡ってスーパーリーグ(「中超」、日本のJ1リーグに相当)の杭州緑城を率いている。

    ◇

 岡田監督は中国サッカーに自由と自己責任の“グローバルスタンダード”を持ち込んだ。それが中国社会のローカルなしがらみにうんざりしていたサポーターたちのこころをつかんだのだ。

出典:http://diamond.jp/articles/-/37077

 2002年のワールドカップで,中国代表は一勝も出来ずに予選敗退した.
一勝も出来ないばかりか,一得点さえあげられないと言うていたらくだった.
しかし,個人的には近い将来中国のサッカーは強くなるだろうと予感した.
その予感は全く外れてしまった(笑)10年以上たったが,鳴かず飛ばずの状態が続いている.

中国サッカー協会をあげての賭博,八百長などの腐敗.
優秀な監督を海外から招聘しても,チーム内に『関係(グワンシ)』による組織力学が働いており,監督の指導が機能しない.
などスポーツ競技としてサッカーが成り立つ環境に無かった事が,大きな原因だろう.

元日本代表監督の岡田武史氏は,杭州のサッカーチームを指導している.
指導に当たって,まずオーナーと関係のある選手を全部外に出した.
政府・共産党の口出しを封じ込んだ.
ユースの育成の責任と権限を監督の下においた.

まずこうした組織改革の上で,選手の自主性を高めることをした.
サッカーと言う競技は,現場の選手の判断で戦術を組み立てて行くスポーツだ.
野球などの様に,一球ごとにコーチからサインが出てその通りに戦術が進むスポーツとは訳が違う.

指導者は,戦略を選手と共有し,選手が考えなくても戦術の組み立てができる様になるまで練習させる.従って,指示通りに動く選手では役に立たない.
自ら考える力を育てなければならない.

岡田監督は,寮の門限を廃止し選手の自主性と自己管理を高める様にした.
「Number」の取材に答え
「最悪なのは、監督がここにいろって言ったからって何も考えずにカバリングしているヤツ。それは俺に言わせりゃ選手じゃない。日ごろの生活で人に言われたことだけやっていたら、試合のなかでも責任を持って判断できなくなる」と言っている.

言われた通りに動けば評価される.そんな組織に慣れ親しんだメンバーは,考える力を失う.自ら考え,行動する.その結果とプロセスが評価される.
そう言う組織のメンバーは常に考え,成長する.その先には考えなくても,自然と行動出来るメンバーとなる.

これはサッカーばかりでなく,会社と言う組織でも同じ事だ.
規律を守ると言う事は,組織運営の基本だ.しかし規律にしばられれば進歩はない.自ら規律を最適になる様に変えて行く事が出来る組織が,進歩出来る組織となる.

組織の文化を創り,選手を鍛え上げるのが監督の仕事だ.その結果リーグ優勝などの成果が出る.岡田監督は更に,次世代を担う若い選手の育成まで掌握した.短期的な優勝請負ではなく,常勝チームの基礎を作る.これがホンモノの指導者だと思う.




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X-Rs管理図

以前xbar-R(エックスバーアール)管理図についてご紹介した.

今回はX-Rs管理図をご紹介したい.

xbar-R管理図は,計量値データで工程に異常が発生していないことを管理する方法だ.製品からサンプルを数個抜き取り,その測定データの平均値(xbar)とデータの範囲(R)が工程の実力範囲±3σに入っているかどうかで,正常か異常かを判断する.

しかし,サンプルの計測が複数個出来ない場合もありうる.
例えば,サンプルの計測にコストがかかる場合.
または連続生産の様に,サンプルが集まるのを待っているとどんどん製品が完成してしまう場合は,極力早く合否判定をしたい.

このような場合にはサンプル1個だけのデータで,管理図を描きたい.
そこで力を発揮するのが,X-Rs管理図だ.

管理図の作り方は,xbar-R管理図とほぼ同じだが,データが1個しかないために,平均値も範囲も計算が出来ない.
平均値の代わりに,サンプル1個のデータ,範囲の変わりに一つ前のサンプルとの差分Rs(移動範囲)を使う.

データが少ないので感度は低いが,サンプリングにかかるコストは少なくて済む.
また連続プロセスのように製品がどんどん出来てくる場合は,1個のサンプルで直ちに管理状態か否かが判断できるので,異常が見つかった場合に廃棄しなければならない不良が少なくなる.

X-Rs管理図の作成手順は以下のとおり.

【手順1】データを時間順に並べる.

【手順2】移動範囲を求める.

 Rsi=|Xi-1-Xi|

【手順3】Xの平均とRsの平均を求める.

【手順4】管理線を求める.
 X管理図
Photo


 Rs管理図
Rs


【手順5】グラフ用紙にX管理図とRs管理図を描く.
中心線(実践)と上下の管理限界線(点線)を入れる.(図には管理限界線を赤色線,中心線を黄色線で示した)

X管理図
X_3


Rs管理図
Rs_3


Rs管理図の管理線の公式と管理図の間違いを訂正しました。

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見えない部分の品質

あとで読む プロジェクター用のスクリーンを購入した.
文房具市場を探しても見つからず,店員に聞くと電脳城に売っていると教えられた.バスで電脳城に行きスミからスミまで探しても見つからない.
なんとカメラを売っている店の奥にひっそりと展示してあった.74インチのスクリーン(三脚付き)が500元で買えてしまう.

オフィスに戻り実際にプロジェクターを投影してみる.良い感じだ.
三脚の高さを調整してみてびっくりした.
スクリーンの周辺は黒く塗られている.スクリーンを目いっぱい引き出すと,枠部分の黒が途中でフェードアウトしている.それもきちっとこの部分までは塗っておく,という意思が全く感じられない.
途中まで塗っておいて,この辺でいいかと中断したような形になっている.

プロジェクタースクリーン
プロジェクタースクリーン

半ばあきれて,この製品の製作図面はどうなっているのかと想像してみた.
我々の常識から言えば,スクリーンを目いっぱい引き出したときに塗られていない部分が見えないように,設計するはずだ.
コストダウンのために黒く塗る範囲を小さくするとしても,あらかじめ見えている部分と同じ幅だけは黒く塗るよう設計するだろう.そして工場はその指示範囲をマスキングなどをしてきちんと塗る.

しかし私の手元にある製品は,マスキングをした様子もなく,適当にこの辺で終わりにした,という感じだ.このようにモノを作るためには,どう図面を書いたらよいのか見当も付かない.


500元でプロジェクタースクリーンが買えた,という喜びは,あっという間に500元ならこんなもんか,という諦めに変わった.

見えない部分の品質が,製品の品格を作る.
品格がある製品は,値引きとは無縁だろう.
品格がなければ値引きをしなければ買ってもらえない.

こういう事例はいくらでもある.
製品の取扱説明書が,並行直角にきちんと折りたたんで入れてある.これが普通だ.取扱説明書が,いい加減に四つにたたんで入れる.
これを見た顧客はどう感じるか?
以前指導していた中国ローカル企業で,これを何度指導しても理解してもらえなかった.
きちんと折りたたむには時間(コスト)がかかる.自分たちの製品はそんなに厳格でなくても大丈夫,というのが現場リーダの「言い訳」だ.
自らどうしたらコストをかけずに済むかという思考を停止し,製品の「品格」を落としている.

彼らは1枚両面印刷の取扱説明書をまとめて四つに折りたたみ,それを1枚ずつ製品梱包箱に押し込んでいる.従ってほとんど丸めて突っ込んだといった方が良い状態だ.
コストをかけずに「品格」を保って取扱説明書を添付することはいとも簡単だ.
折りたたむのを止めればよいのだ.
製品を入れる前に,A4サイズの取扱説明書を折りたたまずに梱包箱に入れる.
この方がコストが安くなり且つ「品格」は格段に上がる.





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